MINISFORUM JB95(N5095搭載ミニPC)を買ったのでレビューする。Jasper Lakeは小型な事務用PCとしてモダンなWindows11環境を提供できるのか?

MINISFORUM JB95の外観写真と他の購入品 ガジェット
MINISFORUM JB95の外観写真と他の購入品
JB95
いわゆるNUC風な小型PC(画像は公式HPより引用)の最新型、MINISFORUM JB95を買いました。

MINISFORUM JB95を買う

MINISFORUMが2021年12月に発売したJasper Lake N5095搭載ミニPCであるJB95を買ってみた。
価格.com – MINISFORUM、32,950円の小型デスクトップPC「JB95」を本日12/18発売

公式の紹介画像がいきなり罠なんですが、公式スペックシートを見るとM.2スロットはSATAって書いてある。お前その画像だとNVMe接続だと思われるぞ……
公式サイトのスペックシートより引用
ストレージが頼りないのと信頼出来るブランドにしておきたい(が、M.2スロットはSATA+NVMe両対応のものとSATA/NVMe排他のものがある)のでSATAのWD Blueな500GBのSSDを買った。
今回の目的は実家のPCがWindows11になれないPhenom 1065Tとかいう爆熱骨董PCの代替なので、メモリは8GBでOK。目的としてはWindows11が動く事務用PCにすること。

N5095って何

スペックはこれ。
https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark/products/212322/intel-celeron-processor-n5095-4m-cache-up-to-2-90-ghz.html

Jasper Lakeと呼ばれる10nmプロセス世代の低消費電力な小型PC/モバイル用CPUなんだけど何故かTDPが15WだったりGPUの性能が制限されているモデル。
YouTuberのレビュー動画によるとフルロード時のシステム消費電力が24Wという事でワッパはかなり優秀との噂。
Passmark基準だがCPUスコア的にはHaswell世代のi3デスクトップや、Skylake世代のi5ラップトップに近い。
我が国の文科省が推奨したGIGAスクール仕様を満たしたN4100(Gemini Lake)搭載PCのCinebenchR15マルチ182cbに対して平均で1.7倍近い300cb出してるので実質1.7GIGAです。
CPU名Cinebench R15 Multi(Median)
N4100(GIGAスクール構想)198cb
i5-4200U(Haswell世代)229cb
J4125(GeminiLake世代)248cb
i5-6200U(SkyLake世代)289cb
N5095(JasperLake世代)300cb
i3-10110U(CometLake世代)321cb
i3-1115G4(TigerLake世代)497cb
i7-1165G7(TigerLake世代)846cb
スコアはすべてhttps://www.notebookcheck.net/から引用。
アーキテクチャは違うものの同じく10nmプロセスになったTigerLakeのi3(2C4T)と比べるとまあ劣るので「i3以下」と言ってしまえばそれまでなのですが、軽い事務用途で電気代にも優しいと考えれば選択肢としてありかなと。

この表を見て「ん?」となった場合は素直に本家Intel NUCのi3-1115G4版を買うとか、上記R15のベンチで1800cbを超えるAMD Ryzen 5 PRO 5650GEを載せたThinkCentreを買うとかした方が良い。低消費電力と実用最低限のギリギリを求めるロマン向け。

他社のN5095搭載PCに関して

Minisforumのこれは現状公式ストア(定価29,980円)かAliexpressで買う等しなければ手に入らないのと別にMinisforumに拘る理由も無い(後述)ので、入手性が良いAmazonでセールやクーポンで値段が下がっているものを買うのが良いかもしれない。

何故MINISFORUMを買ったのか

Jasper Lakeと呼ばれる2021年世代の最新かつ最後のAtom系コアを搭載したPCが最近流通するようになって、色々見る感じでは最近までよく見るJ4125等のGemini Lake世代のPCと比べて2~3割スコアが出ているあたり10nmプロセスの恩恵をいい感じに受けられているようで、省電力PCとして買うなら時期が良いと思った所。
Beelink U59他の中華謎ブランドでも同様にN5095搭載PCが出ているものの、MINISFORUMだけ唯一USB端子の向きが正しかったり(設計をちゃんと考えている)、日本ではリンクスインターナショナルが代理店をしているってところも信頼性という点でプラス(私が買ったのは直営店からの個人輸入ですが…)。
WiFi5+BT4.2と無線周りが最新世代になっていないのはネガティブポイント。ただしこれは他社も同様。
過去の例から見るとM.2ストレージスロットの下にM.2 2230の無線モジュールが刺さっているはずなので、恐らくこれも換装可能。
結論、MINISFORUM JB95の無線は基盤直付けで換装不可能でした。
WiFi6とかBT5.2を使いたい場合は他社製品を買い、技適マーク付いてるのを確認した上で上記のようなネットワークカードを購入する。
商品画像に「020-200172」と記載のあるMediatek 7921Kは技適が通っているので、これとかが良いかも。
ドライバは野良で適当に探せば良いと思います。
https://www.station-drivers.com/index.php/en/outils/Drivers/MediaTek/WLAN/MediaTek-MT792x-Wi-Fi-6-6E-Wireless-LAN-Drivers-Version-3.03.00.0298/lang,en-gb/
https://oemdrivers.com/network-mediatek-mt7921-wireless-lan-driver

セットアップ

まず箱が小さい。
着弾の儀。利用用途的に16GBも要らないのでメモリは8GBです。
調べるとRAM/SSDともにMINISFORUMはKingstonのものが選ばれるようで、ベアボーンじゃなくて普通にセット売りのものを買うのでも良かったかも。
無線換装不可能!
「このサイズなら無線モジュール付け替えられるやろ」と思ったらまさかの基盤直付け。ストレージ増設用のSataコネクタを付ける余裕があるなら無線モジュールは換装可能にしてほしかったな~って感じ。

クリーンインストールだとドライバが足りないのですが「英語版」のMINISFORUM公式サイトからJB95向けのドライバ詰め合わせがダウンロード出来ます。日本語サイトには何故かJB95に関するドライバのリンクが無いので注意。
https://www.minisforum.com/support/43

PD給電出来る?

結論→できます(ただし前面のUSB3.1ポートを使う必要があります)。

背面の給電端子がUSB-C(ただしPowerDeliveryではない)なのが気になって調べると、電気業界ではe-Wasteと呼ばれる電子機器の廃棄量が問題点として挙げられており、固定電圧しかサポートせず端子の互換性も低いバレル型の充電器を廃止しようという動きがあるらしく、これもそれにならったのだと思われる。EUがAppleに対して「Lightningやめろ」って言ってるのもこれですね。可哀想に…

背面の12V専用のType-C端子はPD対応と言ってないので案の定手持ちの12V/3AをサポートしたPD電源からは給電できず、代わりに前面の映像出力をサポートしたType-CポートからはPD給電でき、起動もすんなり行けます。

悪夢のコイル鳴き

卓上の電源ハブに繋いで気付いたのですが、付属の電源はハズレを引いたのかコイル鳴きが結構します。足元に置けばそう気にならないのですがまあ気になる。気になった場合は諦めて前面のPD端子から給電しましょう。

PD給電しつつ良い感じに使えるモニター

運悪くコイル鳴きの個体に当たった場合、PD給電できる丁度良いモニタとしてLGのGW2485TCを買うのが良さそう。
マイクとスピーカーと映像出力と給電をケーブル1本で済ませられてスタンドもそこそこしっかりしてる23.8インチのフルHDモニタが3万円切るのは結構魅力的かもしれない。
BenQのマニュアルからType-C給電の仕様について引用しました。
マニュアルを見ると12V/3A出力できるようなので、多分使えるはず。

N5095って結局どうなのよ

YouTubeで1080p@60Hzの動画を4Kモニタに繋いで(ディスプレイUIのスケーリング150%にしてるからViewportが2.5k)フルスクリーンするとフレームがガンガンドロップしつつ再生速度が変わるくらい不安定なのでいわゆる「リビングPC」として最近の4K環境には付いていけない。Prime Videoの4K@30HzだったりYouTubeの1080p@30Hzはフレーム落ちする事無く再生できるので、極稀に遭遇する超高画質動画に限っての話にはなりますが。
動画再生中のGPUのモニタリング
どうやらN5095に乗ってるGPUは次世代とはいえ同じJasperLakeの中でも演算ユニットが16EUに制限されている(最上位のN6005は32EU)ようで、HWデコード支援が効いてCPUは落ち着いているのに4Kの領域に60Hzの動画を展開できずにフレーム落ち。フルHDモニタに繋いで表示するだけなら何ら問題無い。
DP端子が付いていたりするのでつい期待しちゃいますがソツなく色々やろうと思うとスペックが足りなくなってくる。

とはいえ、アイドルで70W消費しちゃう10年前のPhenom 1065Tとブラウジング等は体感変わらず、Windows Updateでブラウザがフリーズするほど貧弱ではなく、ゲームをしないなら別にこれでいいんじゃないかなという気持ちになった。素直に感動。
ちなみに筐体は30Wのアダプタで済んじゃう位なのでWindowsアップデート直後でもほんのり人肌、ファンの音もほぼ無音。

内蔵のWi-Fiについて

JB95にはIntel AC3165が基盤直付けで搭載されている。
このJB95もAC3165という化石みたいなモジュールが付いてる(MI-MUMO非対応)ので、無線での設置を考えていたり、ルーターとの距離が離れている場合はUSB換装が必須になってくる。 Buffaloから発売されている子機はM.2タイプの無線モジュールよりちょい高いくらいなので、ネットワーク環境に困ったらこれを買おうかなと思ってます。
※普通に使う分には無線環境も困らない感じなのですが、2階建てとか距離がある環境だとMI-MUMO非対応な所とかが響いて辛くなってくるかも。

Windows 11にアップグレードできる?

Windows10インストールの状態からWindows Updateを進めただけではWindows11への更新の案内は降ってこないのでインストールアシスタントを利用してアップグレード。20分くらい待って無事完了。ドライバも対応しているので特に固有の問題に当たる事は無さそう。

まとめ

結局のところ、小型の割に最新のI/Oポートを備えつつWindows11が利用でき、割安で必要最低限のスペックを備えた低発熱PCという評価が妥当になる。
11世代だからとTigerLakeのような最新世代のラップトップのようなパフォーマンスは出ず、グラフィックも予想以上に貧弱な所は値段なり、といったところ。

そんな感じでN5095という割り切ったスペック向けにコストダウンされている箇所もあるという点を理解して付き合う必要があるので、ある程度の理解が求められる。
今回はベアボーン2万+ストレージや無線の換装で8千円+手持ちのOSライセンスで計3万で収まったが、必要最小限のコストとスペックで超小型でモダンな環境を用意するというある意味で縛りプレイに対して意義を感じる人向け…かな。