ギターを塗装からやってみる(Moderne風テレキャス)

自作ギター

以前買ったネックが2本余ってるしボディが生えて来るのは自然な現象です。

概要

完成済みボディを用いてギターを何本か組んでこなれて来たので、生地仕上げのボディを塗装して1本組んでみようという取り組み。
どうせのDIYなので、とりあえず組んでみようではなく細部までちゃんと拘ってみる。

製作計画を立てる

手元にはテレキャスター用ネックが2本あるので、ボディもまたテレキャスタータイプ。
以前購入したカナダの工房は円安で以前より1割高くなっている事や、ボディ自体の木取りや杢/塗装が美しいものの全体的に重量が重く、鳴りも思っていたテレキャスサウンドではなかったです(アッシュやアルダー以外のエキゾチックウッドなので当たり前ですが…)

なので今回はスタンダードな材を使い、なおかつユニークさを求めていきたい。
アイモクであれば1万円を切る値段で木工済みのボディが手に入ったり、SpaltKing Guitarsでは重量レベルで吟味できるが、今回は後述の通りヤフオクで面白そうなボディが出品されていたのでついつい初回入札したら落札できてしまった(あまり意図せず適当に入札してしまったら落札できたのでこの企画を立てた、という見切り発車なのですが…)。

ネック選定

以前買ったFreestone Guitars製のチェリー/レースウッドネックか、StrikerGuitarStudio製の1Pメイプルネック(塗装してFCGRのステンレスフレット打った)を使えたらいいと思うが、ボディ塗装が終わった段階の見た目のマッチングで吟味する。

ボディ・アセンブリ選定

ヤフオクで手製のボディ素体を出品しているaromaredthird様から調達。大切に使わせてもらうぜ!

出品画像から引用します(https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c1108026330)

落札したのはGibson Moderne風アッシュ2Pテレキャス。本家Gibson ModerneのオマージュですがシェイプはテレキャスのPUキャビティを考慮してかちょっとアレンジ入ってる感じ。PUキャビティがスラントしてる感じがオシャレでグッときました。
PUザグリを踏襲するならTL+P90のマッチング。ただFenderが最近出したCOBALT CHROME TELECASTER® PICKUP SETが気になっていたりするので、ここはボディの生鳴りや引いた時のイマジネーションPUを選んでいきたいので最後に吟味するポイントにするとする。
コントロールプレートも含めてトラッドな雰囲気が出そうなので、ブリッジは3wayサドルのブリッジを用意してみたい。

ケースの計画(持ち運びどうするの)

そもそも汎用ギグバッグに入るんか??って形をしているので、NAZCAにフルオーダーか、フライングVや汎用変形ギター用のギグバッグを使うかといった所。これはちょっと悩みどころですね

製作工程

木工

●厚み:43.2mm
●ネックポケットの深さ:17.6mm
●ネックポケットサイズ 56.02mm×54.0mm×76.5mm
●重さ:約2.24kg
●ネックジョイント穴:38.0mm×51.0mm(4.0φ×4)
●弦ピッチ10.8mm×5 (54.0mm)
●弦止めブッシュ穴計8.0mm 

https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c1108026330

ジョイントプレートは穴と径が合いそうなFCGRのトーンシフトプレートを使う。ネジはカラハムのインチネジ(長さ44mm)で。
ピックガードはミントの3Pブランク材を調達。

ボディの軽量化

ボディ素体が2.3kgに対して組み立てるとおおよそ1.3kg増なのでざっくり3.6kg。ボディを叩いてみるともうちょっと削ってもええんやで、という声が聞こえたのでバックコンター加工を入れます。個人的にはボディを多少軽量化する事による音の傾向の変化は材や個体差に比べて圧倒的に少ない派なのでプレイアビリティを取る。変形ギターやし。

荒削りをした後、ちっちゃい反り鉋で仕上がりを狙います。本家Gibsonではコンター加工は無いものの、手元のギターを参考にガシガシ削ってゆく。もともとVでボディ幅が無いので浅めのコンター意識してそれっぽく削る。だいたい50gくらい軽くなった。

ベルトサンダーで両面を削る

ネックポケットが17.5mm程度、なおかつ平面出しで更に削る余裕を考えると手持ちのネックには少し深すぎる。よってボディ表面を全体的に削ります。ネックとのコンビネーションによる弦高調整も考えるとwarmoth基準の15.87mmは浅すぎるにしても、手元のHighway Oneボディの16.2mm程度が丁度ネックに合いそうなのを考えると、1.5mm弱削るのが良さそう。ボディ厚は43mmと記載あったが実際はほぼ45mmといった所で、オリジナルのModerneは38.1mmという説や、ムスタングも39mmを切ってくるので削って薄すぎるという懸念も無い。両面1.5mmずつ削って42mmを狙う。3mmは45mmの6.66%なので、単純計算で2.3kgに対して150g軽量化できる(ザグリ考慮すると120gくらい?)。
カンナは持っているものの、既にPUがザグってあったり、それなりに大きいサイズを綺麗に平面出しする自信と労力は無いのでDIYスペースで電動カンナを使うのがよさげ…と思ったけど電動は電動で初心者が綺麗に平面を出すのは難しいらしい。となるとベルトサンダー。
近所に2,000円/2hで使えるレンタルDIYスペースがあり、ここで削ってみる。ベルトサンダーなら注意すれば初心者でも平面を出せるはず。

ベルトサンダーはめちゃくちゃ便利で、レンタルしたのはBDS-1010なるRYOBIの2万ちょっとで買えるモデルで、ギターを1~2mm削るだけなら慎重に平面を見つつ1時間程度で終わりました。粉塵もめちゃ出るのでこういった機材を安価で使わせてもらえるのは非常にありがたい。本当にありがとうございました

結局ネックポケットの深さはおおよそ16.1mm程度に、重量は2.15kgといった所。ボディ厚は43.3mm程度といった所で、ネックポケットは削りすぎた感もあるが最終セットアップでポケットの面を調整すると考えるとこれくらいで良いのかもしれない。どうだろう。

ネックプレートの下穴修正+ヒールカット

手持ちの中華チタン製ネックプレートを折角なので使う。モダーンなので(?)ヒールカットは仕様に入れておきます。
ネジ穴が合わない所は以前帆船模型のECサイトで買った4mmのウォルナット円柱で埋める。

ネックポケットがちょっと甘い

手持ちのネックが55.5mm前後で隙間が出る&なんか歪んでるので0.5mmのツキ板張ってお化粧します。ギチギチにするつもりは無いのだけれど、スカスカも格好悪いので。隙間より継ぎ目の方が格好付くと思うのですがどうでしょう。あとエンドも微妙に並行じゃない気が…

左側がちょっとモリってたので削る

どうやらネックエンドが微妙にナナメってる様子。適当に裏通しの穴を正として並行をケガいてみると左側が若干モリっとなってるので削る。一説によると裏通しの穴からネックポケットのエンドまで19.53cmとのことで、このケガキは19.5cm。つまりケガキに沿って削ってブリッジのマウントを0.3mm程度穴からボディエンド側にズラせば帳尻が合う計算?誤差なので穴はピッタリにしてブリッジをマウントしてもいいかも。
ネックは2本あり、ネックポケットの仕上げは塗装をしてからにします。

塗装

砥の粉と水性ステインで調色→Xotic Oil Gelヌリヌリの工法を取ります。ウチに塗装ブースは無ンだわ。
ステインについては和信のワインレッドは明るすぎるようなので大橋塗料さんのCFステイン(T-8ワインレッド)でトライしてみます。Xotic Oil Gelで色の出方は変わるとは思うのですがまあ一旦チャレンジ。
まあ一発で決まるとは思っておらず、案の定イメージよりも紫色が強かったのでほんの少し和親のワインレッドと黒も配合します。比率は適当。
とのこにステインを混ぜて導管埋めつつ、好みの濃さになるまで重ね塗りをします…が、ステインととの粉を混ぜるととの粉がダマになって上手く塗れないのでこれは失敗(若干ドロっとしてるから意味あるっちゃあるんでしょうけど)。
Gibsonのチェリーレッドを狙って調色してみたのですがちょっと紫っぽい…ギター業界のワインレッドと塗装業界のワインレッドは違いますね。Xotic Oil Gelを2回塗るごとに800番手で水研ぎして塗膜を整えていきます。ネックならまだしもボディを塗るのは相当しんどいですね。

塗ってみると塗りムラが割と酷く、もっと細かい番手で丁寧に削っておくべきだったな…と
あと手汗が塗装の浸透の邪魔をするので、手袋なりで汗が出ないようにしておくべきだった。

とりあえずの組み上がり

ウエストコンターとヒールカット済

ざっくりこんなもんかなーって所まで塗装を仕上げてネックの仕込みを調整した結果がコレ。うまいことセンターも出たので良かった。ネックポケットはネックをお尻からズラさないと入らないくらいギチギチです。

ピックガード制作

ワインレッドにピックガード合わせるならミントグリーン。なのでミントグリーンのピックガードを買う。3plyだし2.5mm厚あるでしょって思ったら2.1mmしかなかった…これは一回型取りみたいな要領で作ります。
Gibson ModerneとかフライングVはピックガードの当て方が年代によってマチマチで、ガバっとボディ全体まで覆うようなパターンと2~3弦、またはネックセンターをラインにピックガードを切り出すタイプがある。テレキャスター×VシェイプはテレキャスターPUをマウントするためか、普通のテレキャスターのような弧を描く切り方が一般的。

雑コラ
雑コラ2

ただ色々妄想していく中ではP90を乗せる予定もあるので、MoonのレゲエマスターよろしくP90ピックアップがPGからはみ出るデザインとかにしたらちょっとオシャレ感出るのでは?と思ったが、上図のパターンでいく。ピックガードがPUの右端あたりから始まるLP風(?)のPGレイアウトもいいんだけど、Modernはボディが小さく右手側が窮屈なので、PGを小さく取りすぎると不格好になると思い除外しました。

で、こうなった。部屋は整理整頓して綺麗にしないと良からぬものを踏んでケガするので気をつけましょう。

電装着手

どんな音が出るかも分からないのでとりあえず定番パーツで茶を濁します。

  • SCUD CTS POT(500K)AカーブBカーブ1個ずつ
  • ESPのテレキャスター用ジャックソケット
  • Goldo CPT3C(3Wayトグルスイッチが乗っかるコントロールプレート。インチサイズ)
  • そのへんに転がってたオレンジドロップ(0.033μF)
  • そのへんに転がってた3Wayトグルスイッチ(確かEdwardsのレスポールから部品取りした時のやつ)
  • GOTOHのストラップピン
  • そのへんに巻かれてたクロスワイヤー

もろもろSOUNDHOUSEで調達。あとはピックアップ…
ゴトーでええやんと囁く私のコスパ厨と手巻きハンドメイドを求める機材厨が心の中で争っていたのですが、Eric Custom Pickupなる中華のプライベートブランドを選んで見る。

ECサイト画像


P90サウンドが出るテレキャスターPUがあったので衝動買い。リアとフロント合わせて77ドル(1.15万円)だからぶっちゃけ中古のダンカンのセットやFenderの型落ちPUセットが買えそうな値段になってくるが、聞いたこともないPUを鳴らす探究心に耐えきれなかった。

フロント8k、リア7.2kほど
ワイヤーも割と綺麗に巻かれてると思います。

現物はこんな感じ。リアはいい感じのポールピースのあるテレキャスという所でGood。
フロントのSTAPLE P90は構造的にはLollar PickupsのSTAPLEのように裏側は浅めのザグリという所がクリソツなのでLollarのクローンといったところ。ただポールピース先端のダイヤモンドカットが無いのでちょっと手抜き感がある。ワックス塗った感やワイヤー含め取り回しはそこそこ高級感あり。
あとブリッジPUは高さが結構ある上にポールピースが飛び出てる(何故かポールピースの高さのアジャスト幅が少ない)ので、キャビティに余計な配線を引き込まないようにするか、深さをザグる覚悟が必要です。

電装引き回しの様子

これでもか!ってくらいアースは取れるように神経使ってワイヤリング。いわゆる1V1T構成の時にコンデンサーをトーンポットに付けるタイプと、ポット間の接続時点でコンデンサーを噛ます方式とありますがどちらが良いのでしょう?(多分さしたる変化は無いと思うのですが、なんとなく信号を一度トーンポットまで引いたほうが余計なハイが消えてくれる気がするのでこうしています。)

キャビティ間のアースは細い短芯ケーブルをラグで設置しながら繋いで、ブリッジに接する箇所は銅テープにケーブル半田付けして弦アースを取れるようにしました。
ちなみにブリッジは送料込み1000円でヤフオクで買ったノーブランドなのですが、バリがあるわ底面は平面が出ておらずポン付けすると浮くわブリッジコマのネジ穴位置は底面に寄り過ぎてるわで色々手直しが必要だったので、予算に余裕があるなら中華製は辞めておいた方が無難です。

完成

完成の図

で、出来たのがコレ。

PUまわり

ネックのセンターとかPUマウントをしっかり出来たのは自分を褒めてあげたい。
音はブラインドで「これレスポールスペシャルの音です」って言ったらうーんちょっと硬いけど確かにそんな感じね、といった感じで、まあ割と見た目通りの音を狙って作れたのでラッキー。ミックスポジションでカッティングするといい感じにジャキってくれるが、いわゆるテレキャスターらしさのバキバキ(トゥワンギー)感は失った気がする。フロントの音はズ太いP90サウンドで割と好み。

Freestone Guitarsから仕入れたネックでレースウッド指板の色合いが微妙すぎて合うギターが無いなあと半年ほど眠らせていたのですが、ようやく宿主を見つけて一安心といった所でしょうか。Freestoneのネックは太めのものが多いものの、ちゃんとJescar(47104ニッケル)が打ってありつつ、環境の厳しい日本において半年放置してもほぼ狂わなかったので、ビルドクオリティは安定してかなり高いと思います。

適合するギグバッグを探す

このギターは知人の依頼で製作したので、持ち運びに適したケースを用意してあげなきゃいけません。
汎用のテレキャスターとかが入るセミハードケースだと見事に5cmほどヘッドがはみ出します。やはり変形シェイプに6連ヘッドだと都合が悪くなる。いや多分3:3ヘッドでもミチミチになるのでボディシェイプ的に無理がありそう。
ということで御茶ノ水のBIG BOSS(なんか変形ギターに強そうなので)でギグバッグを漁ってみると、店外のアウトレットコーナーでSCHECTER製の汎用変形ギター用のアレ(よく見るやつ)が3,300円で売っていたので即購入。収納や防御力はセミハードケースに負けるが、まあそこまで持ち運ぶ時は必要に応じて買うでしょうという事で。

掛けた費用

品目金額(税・送料込)
ネック\1.6万(概算)
ボディ\12,163
ピックガード\2,100
反り鉋(工具)\2,581
ステイン・刷毛(工具)\2,000
DIYレンタル\2,000
Eric Custom P90セット\11,550
ネックスクリュー\700
アースラグ\170
ペグ(SG381 MG)\6,280
弦(SITのコーティング弦)\1,220
他電装等\8,000くらい?
SCHECTER製ケース\3,300
合計\68,064
工具や塗料を制作費に含めるほど使ってないが、大体消費した金額はこれくらい。

音出し

完成後すぐに友人にデリバーしてすでに手元にないので、一緒にスタジオ入るタイミングがあったら再確認する。

反省点

  • ヤスリがけするときは手袋をしろ。汗で塗料のノリが狂う。
  • ステインはサンディングの具合によって色の浸透が大きく変わる。ムラが出来やすく、尚且つ木部の浸透は少ないため、800番手まで仕上げる→水を一度塗って毛羽立たせる(水引)→800番手→ステイン、のような工程を踏むのが良い?要研究
    • 少なくとも、オイルジェルで研磨するとステインの層を削りかねないので、オイルジェルの塗りムラが出来ないように超薄塗りを重ねるのが良さげ。綺麗な鏡面は狙わずそのまま塗るか、コンパウンドでざっと磨くだけでGibson/Epiphoneのwornとfadedの中間くらいにはなる。鏡面は地獄だと思います
  • オイルジェルは油性、ステインは水性なので面倒臭くてもステインが完全に乾いてから次の工程に行ったほうがオイルステインのノリが良い