ふとヤフオクアプリを見たらテレキャスターのジャンクボディが出ていて、PUも付いてて安くで手に入るならレストアしてみたいなーと思っていた所、ジャンクで同定する資料が無かったためか割と安めで落札できた。
- ネックポケットのスタンプがFender USAっぽい(OCT 15 2009はUSAで、メキシコは15 OCT 2009みたいなフォーマットな気がする。ジャパンは製造元がバラバラで難しいものの、多くはモデル名が刻印されているのでこうならない)
- 打痕の塗装の剥がれ方がラッカーで、マットフィニッシュっぽい→じゃあHighway Oneじゃん
という同定方法でした。現物見たところリアピックアップやキャビティの独特なザグりや、Deluxe Driveピックアップ等がHighway Oneを主張しているのでほぼ間違いない。
- 若干ネックポケットが広い(56.2mm)ので標準サイズのネックを付けるとガバる
- PU/コントロールキャビティ全体にアルミホイルが雑に貼られている
- PUはHighway One純正のDeluxe Drive
- コンデンサーは600Vオレンジドロップに交換されているが、全体的に半田が汚い…
- 電装系PG等込みで2.85kg、パーツ外して2.35kgといったところ。ネック550gペグ200gで足して3.6kg程度の予想。重さ的には良くも悪くもUSAの最廉価グレードって感じ。
キャビティに色々前所有者の苦労の跡が見えるものの…半田の適当さから考えて「アルミホイルでノイズ対策しようとしたけどPUキャビティのアルミホイルが接地してないから逆にノイズ増加→バラして売却」みたいな雰囲気を感じる。
ボディはUSAとはいえ最下位グレードらしく3P。微妙に木が痩せてるのか塗装の上から木目がうっすら見える感じ。
ピックガードは交換されているものの、メイプル指板を付けた時に黒×べっ甲柄だと色の組み合わせ的に気に入らないので白系のPGを仕入れておきます。
上記点を意識しながら、以下のプロセスでテレキャスターを再構築してみようと思います。
- Noise Hell(導電塗料)をキャビティ全体に塗布してシールディングする。
- コントロールキャビティの底が浅いので、キャビティが窮屈ならちょっとザグる
- ジャックプレートはくすみが出ているので清掃するか、最近のネジ止めでサポートする高性能なジャックプレートに交換する
- ネックポケットのサイドが垂直じゃない(削られている?)ので埋めて慣らす
- トレブルブリード回路追加
- メイプルネックを仕入れてステンレスフレットを打つ
- メイプル指板なら白いPGの方がバチっと決まるかな…
導電塗料の塗布と配線やり直し
さすがにこのレベルのイモハンダ見ちゃうとムズムズするのでアルミホイル撤去に加えて、半田も綺麗にしておきます。
Highway Oneの場合、PUキャビティはシールド無し、コントロールキャビティはシールディングされているはずなのだが何故かアルミホイルが巻かれている。タダのアルミホイルっぽくて貼り方が雑な上に、更に固定の為に接着剤がまんべんなく塗布してあったので剥がすのに大変苦労した。
Highway OneのリアPUはベースの金属プレートが無く、弦アースはPU取り付けネジとブリッジの間にPUのコールド線につながった金属を挟んでアースを取る形らしい。リアPUキャビティはそのままブリッジに、フロントPUキャビティは細い銅テープで繋いでコントロールキャビティに落としてからシールドを取るようにします。
ジャンクだからといってPUやパーツ類が死んでるわけでもなく、一応劣化の気になるジャックとジャックプレートをPureToneJack+ESPのちょっとオシャレなソケットに交換。Deluxe Driveなるピックアップは結構高出力なのでこれくらいノイズ対策した方が丁度いいでしょう。
ネックどうする問題
恐らくポン付けできるであろうFenderのリプレイスメントネックはメキシコグレードで4万、アメリカンパフォーマーグレードで6万以上と、本体の調達価格より高く、なおかつ吊るしのFenderギターの再現でしかないので自作的にあまり面白みが無い…(ボディに愛着があればまた別なのでしょうが)
ヘンテコだけどFenderらしいギターにしたいなと思い、テレキャスターのプロトタイプと言われる1949年の「スネークヘッド」を再現したネックを調達することに。
柾目未塗装未フレッティング送料無料のネックを仕入れて、フレッティングからやってみる事に。(折角なので普通のテレネックも仕入れておきます)
ウクライナからの配送物は「UkrPoshta」なる国営のサービスから届くらしい。いわゆるUSPS的な…?
実際発送されてから2週間で届いたので空輸の国際郵便としては普通ですね(色々調べるとトランジットの経由地によっては結構ばらつきがあるっぽい)
スネークヘッドについて
スネークヘッドは1949年のエスクワイアのプロトタイプとして極少数作られたモノ。オリジナルはトラスロッドが無く、3つのペグが連結したクルーソンペグをストリングブッシュ無しで装着されているのですが、それは流石にハードコアすぎる(そもそもアカンが故に今の形になったはず)ので、そのへんは演奏性を適宜考えてトラスロッド有りのものを注文しました。
当時使われていたであろうヴィンテージリイシューの3連ペグは本家は1.1万円で、GOTOH製のコピーモデルは9500円で手に入る。
値段だけで見るとGOTOHの普通のSD90(Gibson用クルーソンタイプ)なら4000円で手に入るし、あえて3連タイプを選ぶ理由も無いのかな…といった所。
なお、市場に流通するスネークヘッドモデルとしてはFender Custom Shopの他、元マスタービルダーのFred Stuart氏のオリジナルブランド等の派生、後はWarmoth等のリプレイスメントネックでもSnakeheadモデルがラインナップされているので、それをベースにしたユニークな製作物も見かける印象。今回もアルダーボディのテレがベースなので初代に対するリスペクトは持ちつつ、自分の頭の中で理解できる構成で、仕上がり重視で頑張ってみようと思います。
開封の儀~フレッティングと塗装
Striker Guitarsからネックを買うのは初めてなのでちょっとドキドキ。そもそもウクライナから発送されるものが果たして日本まで届くかという事にもドキドキしていたのですが。
注文時、メッセージで「柾目と板目どっちが好き?」って聞かれて速攻「柾目!」って答えたら結構いい感じの柾目が届いた。ていうかこの時点で今から作るけどどう?って聞いてたんだろうから、指板ラディアスとか厚さとか変えられるか聞いときゃ良かったかも。
※結局何も言わなかったらごんぶと1インチUシェイプの9.5Rで届きました。狙い通りなのでオッケー
ちなみにこのヘッド中央の埋木(ウォルナット?)はラップスチールギターのヘッドをコピーするために利用したテンプレート用のパターンホールという噂。
オリジナルはレオ・フェンダーとジョージ・フラートン(G&LのGの方)が二人で作ったとされていて、1996年のNAMMショーモデル(フレッド・スチュワート氏がジョージ・フラートンから教わったらしい)や2010年のCustom Shop製レプリカ、キース・アーバンの所有するレプリカ(出自不明)等はこの埋木の再現や、トラスロッドレスの軽量パインボディと合わせた音が出るっぽい。今回のコレはダブルアクションのトラスロッドも入ってるし、指板Rも9.5’で仕上げようとしてるのでレプリカからはちょっと外していくスタイル。
まず指板のストレートとRは未塗装、かつウクライナからの産地直送という所で、アルミ製の9.5Rのサンディングブロックを使ってロッドの調子を見つつ、微調整していきます。(ロッドの効き方を確かめながら割と神経質にやったのでここに1週間費やした)
指板のR整形をしながらざっくり800番手で仕上げて、Xotic Oil Gelで薄塗りを重ねる。Xotic Oil Gelは何回か塗ったのですが、塗りの工程でネックが若干動くようで(硬化する樹脂が木部に染み込んだ時に若干膨張するっぽい)、塗装によるネックの歪みを出しながら、指板がまっすぐになるようにします。
フレットの溝は0.5mmで切ってあるので、今回は0.52mm厚のFreedomのステンレスフレットを打ちます。
フレットの前処理はR付け→ざっくり切り落とし→タング切り落として整形の順でやります。21本分やると若干しんどい。
タングは切りすぎるとフレット浮きの原因になるとよくリペアマン系YouTuberが言及するので、ツライチ手前で成形。隙間は木工パテで埋めていきます。パテは結構痩せるからこんもり盛って削る。
完成
ということで完成。
ローアクション(6弦12Fで1.5mm,1弦12Fで1.3mm)でセットアップしたんだけど、以下に関しては改善の余地あり。
- ナットの切り出し成形(特に指板R)が甘くて、完全に接地してない
- 鳴らして違和感は無いけど、成形に手間取ったのでR付きのヤスリを貼るための小道具とか用意したほうが良かったかも(端材を9.5Rで丸めるだけなので)
- フレットのエンド丸める時に指板をちょっと傷つけちゃった
- エンド成形用の良いヤスリを買うべき?
- FREEDOMのフレットはストレート状態で届くので、完全にキレイなRを作るのが困難
- かなり神経使ったつもりなんだけどフレットレベリングの時に微妙にフレットが歪んで打たれていたので、ストレートで切り出してあるフレットをうまくR付ける方法とか、指板のRに対してどれくらいフレットのRは余裕を持たせて曲げるべきとか、フレット打ち工具はどうするべきか(圧入工具を使うべき?)とか、調べてもわからないコトが多すぎる
- 今回はジャンボフレットだから成形でどうにでもなった(?)
かかった費用
項目 | 金額(だいたい) |
ギターボディ+PU+コントロール系パーツ | \20,500+送料 |
ピックガード | \3,000 |
ネック | $152(=\20,520) |
PureToneJack + ESP製ジャックプレート | \2,500 |
ピックアップ高さ調整用シリコンチューブ | \450 |
SD90-HAPM-05M-L3R3-Nickel | \7,980 |
牛骨ナット | \500 |
GOTOHのチタンサドル | \2,810 |
FREEDOMのステンレスフレット | \2,500 |
中華チタンネックプレート+MONTREUXねじ | \3,500 |
元についてたPUの高さ調整用シリコンゴム(?)がかなり劣化していたのと、ジャック等気になる所は交換しつつ、スモールパーツにちょっとお金使っちゃったなーという感じ。ただ音の纏まり方やピッチ感等のサウンド面は安いパーツで妥協したくなかったし、黒ボディメイプル指板は単色ピックガードが似合うし結論これくらいお金使ってよかったなーと。完成重量は3.65kg程度なのでちょい重。
極太Uシェイプネックは言うほど弾きづらさは感じない感じ。音はアタック感強めでネックが振動しない分、弦とボディが鳴る感じ。今まで持ったギターのどれとも違う生音。Elixirナノウェブ+チタンサドル+チタンネックプレートが寄与してるからかトレブリーな音の印象アリで、中域のコシ感みたいなのはあんま感じない。
Deluxe Driveピックアップを通してアンプシミュレーターで鳴らした音はちょっと高出力なテレキャスターの音って感じ。RATモデリングの歪みを強く掛けるといい感じにドライブしてくれるし生音と違ってローミッドがよく出る。傾向としては歪ませて弾く系ですね。
Striker Guitarsのネックが意外と精度良く、普通に弾ける感じで組み上げられたのでまあスタジオ持ち込んだり色々やってみたい。
あとギター増えすぎたのでもう自作ギターやりません。
エンジニアとして働く90年生まれ。Web系技術を追っかけたり、PCガジェットや自転車いじりが趣味。オーディオオタク。